深海が好きだと話すと、 「深海ってどういうこと?定義はあるの?」とよく聞かれます。そうすると、決まって答えるこのフレーズ。「深海とは水深200メートルより深い海のことです」。それで深海のことを説明できたような気持ちになっていたけれど、それだけでいいのでしょうか。あらためて、フカメディアの仲間たちと深海とは何かを考えてみました。
いつ、誰が“深海”を定義した?
スケおじさん、こんにちは。さっそくですけど、深海ってなんでしたっけ?
おや編集長さん、こんにチムニー。なにかお悩みですか?
いえね、深海って200メートルより深い海のことだって決まって言うじゃないですか。
太陽の光がほとんど届かなくなって、植物プランクトンさんが光合成をできなくなる深さ、というよく知られたおはなしですね。
それです。それって、そもそも誰がいつ言いはじめたことなのか、実際に光合成の限界が検証されたのか、そういう記録は残っているんでしょうか。
ほぅ、なるほど。いつ、どうやって「深海は200メートルより深い海のことにしよう」と決まったのか?と疑問に思ったと。
わたしたちが日ごろよく目にする定義の出どころが知りたいなって。
ふむふむ。では悩めるあなたに答えを差し上げましょう。
ズバリ、そこは深掘りしてもあまり意味がない!ですよ。
……!!
えぇ!!それはなぜですか?
学問の世界では厳密に区分していないのですよ。さっきの定義は、あくまで人々がストーリーを理解するための目安。学問の分野が変われば深さを意識する必要すらなくなる程度のことですから。
それよりも、私が住む深海の「分からなさ」を知ってみるというのはどうでしょうか(テレ
フカカ…フカブカ~!
海は広いな大きいな、というけれど
編集長さんは、地球の表面積のうち海の割合がどれくらいあるかご存知ですか?
たしか70%だったはずです!
おぉ正解ですよ。
【フカメさんの豆知識】
地球の表面積は約5億1千万平方キロメートル。それに対して海の表面積は約3億6千万平方キロメートルあるぞ。
では地球全体の海のうち、水深200メートルより深い海はどのくらいあると思われますか。
世界一深いマリアナ海溝がだいたい10,920メートルですよね。縦方向の深みと横方向の広がりを考えると、85%くらいですか?
いえいえ、約95%ですよ。
ほとんどやないか!
あ、失礼しました。びっくりしすぎて関西弁が出てしまいました。
フカブカ~!
お分かりいただけましたね。深海とは、海のほとんどなのですよ。
深海とは何か
スケおじさん、先ほど「深海の分からなさ」とおっしゃっていましたよね。深海の調査はどれくらい進んでいて、どれくらいが未踏なのですか?
ヨコヅナイワシを発見したことで有名なJAMSTECの研究員フジワラくんは、2022年のインタビューで「私の感覚では、まだ1%もわかっていないのではないかと思っています」と話していましたよ。
JAMSTECとは海洋研究開発機構の略称で、ジャムステックと読む。海のあらゆることを研究していて、人を乗せた潜水船で深い海に潜ったりもしているぞ。
地球の7割を占める海のうち95%が200メートルより深くて、その99%が未知!
地球の外、宇宙の方が分かっていることが多いんじゃないかとすら思えてきました。
歴史から推測できる宇宙の果ては138億光年先。その宇宙を、129億光年先まで見られる宇宙望遠鏡でずっと覗いてきましたからね。JAXAのムラヤマくんは2010年のインタビューで「宇宙で分かっている物質は全体の約4%」だと言っていますね。
「宇宙の物質」に限定して約4%で、JAMSTECの藤原研究員が深海のことは1%も分かっていないのではと話すより10年以上も前。宇宙の方が、分かっていることが多そう。
みなさんは住んでいる星のことを、まだほとんど知らないということですね。
地球の住人として、わたしたち深海のことも、もっともっと知らないといけませんね。
今度「深海ってなに?」って聞かれたら「海の95%を占める、宇宙よりも分からないことだらけのワンダーゾーンだよ!」と伝えようと思います。
みなさんが、私の住む海底を気軽に訪ねてくれる日が来るのを心待ちにしていますよ(ニッコリ
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